DESIGNER INTERVIEW

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南條 私は大田区の下町に住んでいましたが、駒沢公園などにはよく出かけた記憶があります。その時に、目黒通りから北側の八雲、柿の木坂のあたりは、小さい頃でもお洒落な雰囲気を感じていました。あの雰囲気というのは、街のひとつのステータスであって、今回の建物にもそれを踏襲していきたいと思いました。

駒沢オリンピック公園(約1,230m・徒歩16分)
ヒブスマ(約250m・徒歩4分)

松島 目黒通りを挟んで、大岡山側と八雲側ではちょっと雰囲気が変わって、八雲側はパーシモンホールがあったり、小さいギャラリーがあったり、アーティストの友達が個展などを開いたりしていて、そういう文化発信の場所というイメージがあります。私は大岡山と都立大学の間ぐらいに住んでいましたが、やはり目黒通りを渡るだけで、心持ちが変わるような感覚はありましたね。

柿の木坂(約320m・徒歩4分)
柿の木坂(約320m・徒歩4分)

また、大岡山から都立大にかけての住宅地というのも、すごく良い街なんです。雑誌に載っていそうな面白い住宅がいっぱいあるんですよ。ちょうど建築を学び始めた頃でもあったので、魅力的な建物を探しながらいつも散歩していました。そうした住宅地の優雅な空気感と駅前界隈の繁華街感、八雲側の文化エリアといったコンプレックスを日々楽しんでいました。全然飽きない街で、常に刺激的でしたね。良い思い出ばかりです。

南條 自由が丘の方に行くと、図書館がありますよね。あと、ボーリング場やスタジオ、漫画喫茶があって。都立大学の街にはそういう文化の匂いを感じます。

南條 難しかったのは、駅前の賑やかさをどう捉えるか、ということです。ある種の下町感があって、悪い物ではないのですが、やはり、建築的には少し抵抗があって。じゃあ、どうしていこうかと。

頭の中にあったのは、自由が丘のマリ・クレール通りでした。あそこには少なからずフランスの香りを意識した雰囲気があると思うのですが、そういったものを都立大学の駅前に降りた瞬間にも感じられるようにしてもよいのかなと思いました。

なぜかというと、やはり八雲であったり、碑文谷、柿の木坂に行ったときに、どこか西洋の街並みの雰囲気を感じたので、それを駅前に持っていくことで、今後都立大学の街並みを引っ張っていけるような建物にならないかなと。そんな思いで外観の考え方をまとめていきました。

自由が丘のマリ・クレール通り
自由が丘のマリ・クレール通り

松島 都立大学の先進的な文化は小さいスケールから始まってる印象があります。コーヒーショップやスタジオ、ギャラリーなどもそうです。大きいスケールにおいては、高級で落ち着いたイメージを踏襲させて、小さいヒューマンなスケールにおいては活気を持たせる。そういう対比にチューニングしていくと、さらに魅力的な街になるかなと。

ですから、今回の計画地のような角地の良い場所に、街の秩序をつくれる建物が立つと、都立大学の魅力あるコンプレックスが上手く整理されるように思います。そういった意味で、あの場所を落ち着かせるのは、正しい選択だと思っていました。

松島 都立大学には、上品・上質な住まい、ある種オーセンティックな建物がある一方で、下町っぽい物もあるし、どんどん先鋭的な文化になって行き得るものもあって、やっぱりそのハイブリッドは表現したいと思いました。私がプロジェクトに参加するに当たって、すでに南條設計室さんの資料は拝見していたのですが、そこに「先鋭と気品」というハイブリッドのコンセプトを掲げていたのを見て、これは完全に共通するものがあるなと、一瞬で読み取れました。ですから、そこに抗わずに今回のモデルルームにもそれを踏襲して、クラシカリズム、オーセンティシティとスマートな先進性というものの混成をいかにインテリアで表現するかということを考えました。

南條 さきほど、西洋の街並に言及しましたが、伝統的な建物をそのまま持ってくれば良いかというと、そうではなく、東急東横線のお洒落感や、都心に近接する駅の徒歩1分という立地におけるライフスタイルをイメージしたとき、やはり現代の感性に合った洗練されたものでもありたいと。ですから、伝統的な建築物のディテールを上手く取り入れながら、全体の印象としてはモダンで先鋭的に。こうしたアイデアは、魅力的なコンプレックスを持つ都立大学の街の縮図とも言えますね。

南條 今回は1階部分(店舗部分)の作り込みが、とにかく大事だと思いました。計画地は住宅地ではなく、あくまで顔は基壇部の商業部分なので。テナントのお店の色が表に出て面白くなれば良いのですが、そうでないケースも想定して、外側の建築の部分である程度、どのようなお店が入っても制御できるような形でのつくり込みを考えました。基壇部のディテールとして、建物に雁行を敢えてつけて陰影のある表情をデザインしています。あと、基壇部は4スパンあって、3スパンが店舗。残りの1スパンがマンションの共用部になるのですが、そこにマンションの顔をつくることに違和感があったので、ショーウィンドウというかたちであたかも店舗が並んでいるような形にしつらえ、商店街へ続く沿道としてのつくりこみというものを意識しました。

外観完成予想CG

松島 私がこだわったのは、(モデルルームの)プランを見てひと目で分かる斜めのテーブルです。あれはかなり思い切ったんですけど、角部屋だからこそできる豊かな空間のあり方を考えた結果なんです。

南條 かなりインパクトありますよね。(笑)

松島 見た目の強さもあるのですが、実はかなり合理的で機能的だと思っています。まず、バルコニーに出やすいこと。それにソファに対してもある程度引きがとれるので、リビングの広さ感にも直接的に影響します。モデルルームに訪れた方々に、リビングを歩き回ることで、そのスムーズさを自然と感じていただけると嬉しいですね。

LIVING DINING

松島 まずコンセプトは本当に共感しました。また、形においても、先程おっしゃられた「陰影のある表情をつくった」というポイントが、非常に重要だと思っています。これは私も建築を設計する上で常に意識することなんですけど、現代の街並みというのはどんどん明度が上がっているのです。

それは、例えば住宅ひとつとっても、昔は軸組工法という建物の作り方によって場所に合わせた複雑な輪郭に下屋や格子といった物が取り付いていたのですが、近年主流のパネル工法は、つるんとした凹凸のないボックス型なので、建物に影が無くなるんです。そうすると単純に街全体が明るく見える。これは一見良いことに聞こえるんですけど、逆に言うと表情が乏しいわけです。古い街並みを歩いたとき現代の住宅地と何が違うかというと「暗い」、つまり明度が低いんです。彫りの深い街はすごく安心できる、落ち着きが出ます。今は明るい色の素材が好まれますし、メンテナンスフリーで色がくすんだりもしない最新のマテリアルが開発されているので、街並みがひたすらに明るくなっていくな、という一抹の寂しさを覚えたりします。

南條 そんな中で、永く変わらない価値を持った物として、街に彫りの深い表情をつくっていただいたことは、とても共感できます。建物の表面積が大きいと、人々の「取り付く島」ができます。つるんとしたファサードには「取り付く島がない」。今回の建物は本当にいつの時代でも表情を保って、都立大学の方々に愛され続けるものになるんじゃないかと思います。

私はやはり、先程のあの斜めのテーブルにとても驚きました。最初に資料で拝見したとき、「ああ、やったな」と。(笑)私の会社は今年で創業34年になりますが、住宅をメインに一筋でやってきている中で、やはりあのようなアイデアは、住宅だけやっていると、なかなか発想として出てこないんじゃないかと思いました。その切り込み方というか、松島さんならではというか、定石をひっくり返したなと。でもそれが、実は良く見ていくと、斬新性が大事なのではなく、このプランを突き詰めていくと実はこれが最も機能的なのではと思えるようなレイアウト、プランニングというのは、さすがだなと思いました。

南條氏が手がけた「ドレッセ用賀」

それと内装に関しては、今回プロジェクト的には私たちが先に参加して、あとからインテリアをご提案いただくという流れでしたが、このようなケースだと、中は中、外は外ということで、やはりそれぞれのデザイナーの意図が上手くマッチしないときも、今まではありました。ですが、今回はお客様に比較的すんなりとデザインの意図を感じ取ってもらえるような演出になっていると感じました。

松島氏が手がけたLe MISTTRAL(Photo by Takumi Ota)」

松島 丹精込めてインテリアをデザインしておきながら矛盾したことを言うようですが(笑)、どんどん外に出てほしいですね。都立大はやはり街が面白いので。あとは、整理体操というんでしょうか、街で得た情報を家に戻ってきて、整理し直すみたいな、街とともに暮らす生活を是非していただきたいと思います。「ドレッセ都立大学」を拠点にして、都立大学の暮らし方を自分なりに発掘してもらう。そのためのアジトみたいな感じでとらえていただけると嬉しいですね。

南條 同感です。とにかく街に出てほしい。私たちがまだ知らない所も、きっといっぱいあると思います。そういうものをどんどん発見していける街だと思うので。

1979年長野県生まれ。2002年東京工業大学建築学科卒業。2005年東京工業大学大学院建築学専攻修士課程修了。隈研吾建築都市設計事務所を経て2011年松島潤平建築設計事務所設立。2016年~芝浦工業大学非常勤講師。2019年~東京大学非常勤講師。『2015年度グッドデザイン賞』『2016年日本建築学会作品選集新人賞』受賞等。

『Joint/Point』Photo by Takuya Furusue
『Slash/Plush』Photo by KAI HIRATA
松島潤平建築設計事務所

場所の特性と素材の特性を掛け合わせて新たな美しい空間を導き出すことを理念とし、住宅、宿泊施設、保育園等の建築設計のほか、住居リノベーション、商業施設等の様々なインテリアデザインを手掛ける。

1981年ブラジルサンパウロ生まれ。2005年武蔵工業大学工学部土木工学科卒業。2006年に入社以来、これまでに「ドレッセ用賀」「ドレッセ南雪谷」「ドレッセ青葉台アベニュー」等の実施設計およびデザイン監修業務を担当。

ドレッセ青葉台アベニュー
ドレッセ南雪谷
株式会社 南條設計室

1985年設立。「住宅から都市デザインへ」を基本理念とし、個人住宅、集合住宅の設計から、都市開発・市街地再開発事業などのまちづくりまで、都市建築の様々な分野に幅広く関わり、近年多くの都市住宅のデザイン監修業務に携わる。

※掲載の環境写真は2019年4月・5月に撮影したものです。
※掲載の徒歩分数は80mを1分として算出し端数を切り上げたものです。
※掲載の完成予想CGは計画段階の図面を基に描き起こしたものであり、形状・色味等は実際とは異なります。尚、外観形状の細部、照明・排水設備、室外機・雨樋・換気口等の設備機器、敷地周辺の信号・消火栓・電柱・標識・ガードレール等は表現を省略または簡略化してあります。
また、植栽については、特定の季節、時期、またはご入居時期を想定して描かれたものではありません。葉や花の色合い、枝ぶりや樹形は想定であり、実際とは異なります。外観完成予想CGと計画地から都立大学駅方面を臨む敷地周辺を簡易的に描いたイラストを合成したもので、表現を省略または簡略化しており、敷地外建物の形状やデザイン、その他は実際とは異なります。敷地内及び建物内外に店舗ならびに地元商店街の看板等が設置される予定ですが、設置場所や形状等が未定のため表現しておりません。エントランス等の共用部を除く建物1階の施設は共用施設ではないため、当該施設の所有者・運営事業者により、用途や運営内容、看板デザイン等が決定されます。また、当該施設は居住者以外の第三者が立ち入り利用します。なお、2019年8月現在、当該施設の運営事業者、用途、開業予定時期等は、売主は把握しておりません。
※掲載の室内写真は、モデルルーム(Cタイプ・メニュープラン1)を撮影(2019年7月)したもので、家具・調度品等は販売価額には含まれておりません。また、設備仕様につきましては一部住戸に限るものや、選択式のもの、オプション(有償)が含まれております。オプション(有償)には、申込期限があります。